私の実家にポテトという名前のラブラドールがいます。飼い始めたのは私と弟が高校生の時、母が子どもが手を離れて寂しくなってきたからと念願の仔犬を買ってきたからです。Ta-Ta(タータ)
母は実家で犬を飼っていただけに犬が大好き。けれども父は動物など飼ったことがなく、私たちが縁日ですくってきた金魚にもブツブツ言うくらいに生き物嫌いであったため、母が父の反対を押し切って仔犬を連れ帰ってきた時には驚きました。
父は帰ってきて早々に自分は金輪際世話はしないと宣言して仔犬のことは無視を押し通し、母は仔犬にポテトと名付けしつけに奔走し、私と弟は仔犬が気になりながらも部活が忙しくて家にあまりいない日々でした。母は仔犬の世話を得て生き生きとしており、自分が用事がある時は、父に面倒を任せられないため、ポテトをゲージの中に入れて、トイレや餌の準備を完璧にしておいて出かけるようにしていました。
けれども時々、ポテトが餌や水に口をつけた様子がないことに疑問をもっていたようです。
飼い始めて1ヶ月が経ったころ、母は用事に出かけ、家には父とポテトだけになりました。しかし、その日は私がいつもより早く帰ってくるようになっていました。帰ってきた私は母からポテトの様子を見てほしいと頼まれていたためゲージの所に行きました。けれど中にはポテトはおらず、入り口が開いていました。脱走という言葉が頭をよぎり、急いで全ての部屋を探しに行きました。どの部屋にもポテトはおらずベランダに来たときです。ベランダは柵になっており、もしポテトが隙間から出てしまったら落ちて地面に叩きつけられてしまいます。ポテトがいたら、刺激しないようにそっと声をかけようと恐々覗き込みました。ポテトはベランダにいませんでした。そのかわり、庭で駆け回っているのが見えました。驚いて見下ろすと、父が無言でポテトにボールを投げ、とってこいを教えていました。
私は何も見なかったことにして、父とポテトが家の中に戻ってくるまでリビングで過ごしました。父はポテトを抱いて部屋に入ってきて、私に気づくと一瞬立ち止まりましたが何も言わずにポテトをゲージに戻しました。
私はこの出来事を母には伝えませんでしたが、さらに数ヶ月経ったときにとうとう母に父がポテトの世話をしていることがバレました。その時の母の勝ち誇った顔と父の場の悪そうな顔が忘れられません。そして今は夫婦二人で毎日ポテトの散歩に出かけています。